見せるために建てる、二軒目の家|夢の街 Storyscape 第3章13回

Walleve Creative Studio

〜見せるために建てる、二軒目の家〜

皆さんこんにちは、夢の街物語 第13回です。

【はじめての方へ|このシリーズについて】
「夢の街 Storyscape」は、WALLEVEで実際に起きた制作や試行錯誤を、「夢の街」という架空の街の現象へ置きかえて綴る短い物語シリーズです。

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今回の語り手は、街の案内人「ユメミ」です。


街のはずれに建った、あの見本の茶屋「とまり木」は、あれからずっと、誰も訪れないまま静かに建っていました。

ある朝、Walleveスタジオを訪ねると、わんこはまた大きな地図を広げていました。今度の指先は、茶屋のとなりの、もうひとつの余白です。

「もう一軒、こんどはまるで違うお店を建ててみたいんだ」

わんこが思い描いていたのは、湯気とお茶の香る茶屋ではなく、やわらかな灯りのいやし処でした。同じ通りに、まったく表情の違う家を建てられるのか。それを確かめたかったのです。

呼ばれてやってきたルーは、話を聞きながら、また空中に銀色の枠を描きました。むかえの言葉。ほどこしの品。やすらぐ時刻と、ここへ続く道。そして、たずねごとを受け取る小窓。

枠のかたちは茶屋のときと似ていました。けれどルーが線を結ぶと、図面には茶屋とはまるで違う、しずかな紫の色が流れました。

「骨組みは同じでいい。まとう色と灯りが、この家を別のものにする」

その光を見て、街の工匠ガクがやってきました。銀色の鞄から板を取り出し、ハンマーを振るうたび、カチリ、カチリと、二軒目の家が街に留められていきます。合わない壁は、その壁だけ。低すぎる棚は、その棚だけ。手順は茶屋のときと、まるきり同じでした。

日が傾くころ、通りには二軒の家が並びました。木の香りの茶屋と、紫の灯りのいやし処。となり合っているのに、ふしぎと似ていません。

わんこは二軒を一軒ずつ仕舞わず、通りに面した広場に、並べて置きました。

「しまいこんだら、だれの目にもとまらないもの。ここに並べておけば、通りかかった人が、ふと足を止めてのぞける」

そして、まだ何もない三軒目の余白を見つめて、わんこは言いました。

「今度は、見本だけを集めた家を建てよう。部屋ごとに、ぜんぶ違う設えにするんだ。ひとつの家の中に、いくつもの表情を」

その夜、ルミナが広場の幕をひらき、琥珀色の光で二軒を映し出しました。並んだ家々は、どちらも客の数を知りません。それでも、光の中でしずかに息づいて見えます。

「私は、ずっと気にしていた」わんこがつぶやきました。「せっかく建てたのに、まだ誰も来ないって」

「でも、ちがったんだな。この家は、お客さんを待って灯す店じゃなかった。見てもらうために建てる家だったんだ」

だから「まだ誰も来ない」は、傷ではありませんでした。見せるための家は、並んだその瞬間から、もう役目を果たしはじめていたのです。

ルミナが胸の灯りをそっと押さえて、微笑みました。

「見せるための家が二軒。そして、見本だけの家が、これからもう一軒。……なんだか、通りが賑やかになってきましたね」

空白だった地図には、小さな屋根の印が、いつのまにか三つ。広場からの帰り道、新しい通りの石畳が、カチリと音を立てました。まだ名前のない誰かが、この並んだ家々を見つける、その日のために。

――夢の街の案内人 ユメミの記録

今回の“もと”になった出来事

今回の物語のもとになったのは、前回の見本の茶屋「とまり木」に続く、ホームページ制作の見本づくりの続きです。一軒目の喫茶店の見本に続けて、まったく業種の違う二軒目——架空のヒーリングサロンの見本を、同じ作り方で建ててみました。骨組み(構成)はほぼ同じでも、まとう色合いと雰囲気を変えるだけで、まるで表情の違うページになります。

できあがった見本は、しまいこまずに、サービス紹介のページに並べて置きました。通りかかった人がのぞける「制作例」の棚です。さらにこれから、見本だけを集めた——中のコンテンツごとにデザインの違う——「生きた見本帳」となるサイトを建てようとしています。

「せっかく作っても、まだ誰も来ない」。制作の途中で、そんな気持ちがよぎることがあります。けれど見本のサイトは、注文を待つための店ではなく、「こんな家が建てられます」と見てもらうために建てるもの。並べたその瞬間から、もう役目を果たしはじめている——今回わかったのは、そんな見本の役目のかたちでした。(実際のお問い合わせや反響は、まだ数えていません。)


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