〜小さな商いの家の扉が開かなかった理由〜
皆さんこんにちは、夢の街物語 第17回です。
【はじめての方へ|このシリーズについて】
「夢の街 Storyscape」は、WALLEVEで実際に起きた制作や試行錯誤を、「夢の街」という架空の街の出来事へ置きかえて綴る短い物語シリーズです。
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今回の語り手は、街の案内人「ユメミ」です。
坂道の灯りが、石畳に長い影を落としていました。商店街を離れたわたしは、街の端にある小さな商いの家へ向かいました。
商いの家の前には、わんこが立っていました。扉の横の蔦が風に揺れ、壁の灯りはあたたかいのに、取っ手には長く触れられていないような冷たさがありました。
わんこは上着の内側から、古い鍵を取り出しました。小さな音を立てて鍵は鍵穴に収まり、静かに回ります。けれど、扉は開きません。取っ手に置かれた手が、押すより先に離れてしまったのです。
「壊れているのは、鍵ではないようだな」
扉の脇には、小さな真鍮の板がかかっていました。灯りを受けた縁だけが光り、真ん中にはまだ何も刻まれていません。
商いの家を開けば、そこにはあるじの番地を記すことになります。けれど、一日の終わりに帰る場所まで街じゅうに知らせることを思うと、わんこの手は止まってしまうのでした。
コトノは、扉の前に残る足跡を帳面へ写していきました。近づいて、立ち止まり、少し離れる。重なった跡を読み終えると、静かに顔を上げました。
「扉に拒まれていたのでは、なかったのですね」
わたしは抱えていた街の案内帳を、灯りの下で開きました。そこには、暮らしの場所とは別に、商いの家のための番地を借りる方法が記されていました。
まだ番地を借りたわけではありません。この夜に商いの家を開けたわけでもありません。たしかめなければならないことは、まだ残っていました。それでも、扉が閉ざされていた理由と、進むための道が、初めて同じ灯りの下に見えました。
「鍵のありかは分かった。まずは、今できる支度から始めよう」
わんこは扉を無理に押す代わりに、入口へ道具箱を運びました。古い知らせを外すための道具を取り出し、足元の葉を脇へ寄せます。
真鍮の板は、まだ空白のままです。取っ手の向きも、さっきと変わっていません。けれど、入口には道具が置かれ、扉の下には細い琥珀色の灯りが一本だけ伸びていました。
――夢の街の案内人 ユメミの記録
今回の“もと”になった出来事
今回の物語のもとは、BASEで作ったショップを育てたいと思いながら、「特定商取引法にもとづく表記」に載せる住所や連絡先への不安から、本格的に進められなかった出来事です。
そこで、暮らしの住所と分ける方法として、バーチャルオフィスという選択肢を知りました。ただし、現在はまだ契約しておらず、ショップを開け直したわけでも、売上が出たわけでもありません。物語の「空白の真鍮板」は、その未完了の状態をそのまま表しています。
住所の準備が整う前にも、古いお知らせや分かりにくい商品名など、目の前の店内で直せるところはあります。扉を開けたことにせず、それでも「今できる支度」を始めた段階を、第17回の物語にしました。
同じ出来事を、別の書き方でもまとめています。気持ちの記録は趣味を副業に変える方法 #17|BASEの店をずっと開けられなかった本当の理由、住所を出さずに店を開く仕組みと比べ方は【実測#17】自宅住所を出さずにネットショップを開く仕組み:特商法の住所の3つの選択肢と、バーチャルオフィスの比べ方です。
前回の物語はこちらです → 灯りの下の小さな札|夢の街 Storyscape 第16回
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