朝の広場に、金色の光が静かに差していた。
このごろのわたしは、広場に立ってから「今日は何から始めよう」と長く迷うことがなくなった。街の一日の段取りが、ようやく手になじんできたのだ。
朝の札を順に並べれば、今日ひらく場所と、あとでよいことが見えてくる。迷う時間が減ると、ほんの少し、手があく。
その手で、わたしは夜の催しを作る仕事を、相棒たちに分けてみることにした。
絵を描く者には、幕に映す景色を。曲を奏でる者には、夜を包む音を。そしてルミナには、琥珀色の齣(こま)を幕へ映す役目を渡した。
ひとりで何もかも抱えるより、それぞれが得意なことを受け持ったほうが、作る手は早く進む。
けれど、夜ごとに幕を見上げるうち、わたしは別のことに気づいた。
絵も、音も、齣も、作るところまでは早い。けれど、それらを初めから終わりまで通して見て、ずれや小さな違いを見つけ、直すには手がかかる。
前の夜も、ルミナが映す灯と語りが、少しずつ離れてしまった。あとから何度も直すより、ルミナへ渡す順番をそろえたほうが、幕の上ではきれいにつながった。
「作る手が早くなっても、確かめる目はなくせないのね」
わたしが言うと、ルミナは真鍮の胸の前で、こくりとうなずいた。
そこで、わたしはひとつの催しに、街じゅうの灯をすべて集めるのをやめた。幕を確かめている間にも、別の場所で動かせる手を残しておくことにしたのだ。
その手で始めたのが、街のものづくりを支えてきた、一軒の家を直すことだった。
わたしはこれまで、その家に何度も手を入れてきた。柱を直し、窓の向きを考え、訪れた人が迷わないよう道をつなぎ、夜には灯をともしてきた。
長く使ってきた家だからこそ、今の仕事に合っているか、あらためて見直す時が来ていた。
まったく新しい家を、一から建てるのではない。今ある柱や窓を確かめ、残すものを大切にしながら、直せるところから直していく。これまで家を手入れしてきた手つきを、そのまま使える仕事だった。
まだ、最初の柱に手をかけたばかりだ。どれだけの人がその家を訪れ、「ここで働きたい」と言うのかは分からない。数えるのは、まだ先でいい。
夜が深くなるころ、広場の幕の向こうに、手入れを始めた家の小さな窓が見えた。
早く仕事を終えることだけが、大事なのではない。そこで空いた手を、次の何かへ回せること。その手が、今ある場所にも新しい灯をともせること。
わたしは若草色の明かりをひとつ持ち、仕事場の窓辺へ置いた。
その灯に照らされて、家がどんな姿に整っていくのかは、これからの夜が静かに教えてくれる。
今回の“もと”になった出来事
今回の物語のもとになったのは、毎朝の仕事をAIに整理してもらう使い方が身につき、次に、絵・音楽・動画などを作る仕事へ助けを広げたことです。Codexなどに役目を分けて任せると、作るところは早く進みます。一方で、できたものを最初から最後まで確かめ、ずれを直す手間は残りました。そこで、一つの制作だけにすべての時間を使わず、空いた手をWALLEVE Creative Studioの手入れにも回すことにしました。WordPressという道具で作った今のサイトを見直し、これまで積み重ねてきた内容を残しながら、訪れる人や、これから関わる人に分かりやすい形へ直していく取り組みです。まだ始めたばかりで、作業時間や直せた数、その結果は測っていません。AIで空いた時間を、今ある仕事場を育て直すために使う試みを、物語の「家の手入れ」に置きかえました。
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